Ely Folk Weekend

(内容満載)
Elyのホテルの部屋はいままでで一番広かった。夜は子供と大きなダブルベッドに寝る。夜中一度子供がベッドからおっこったが自宅とちがってすぐに助けに行けない。でも、朋は泣かずに下でそのまま寝ていた。それにしても寒い。持ってきた服を全部着ても寒い。フェスに着ている人はみんなセーターやフリース素材のジャケットなどを着ている。以前6月にイギリスに来たときだって、こんなに寒くなかった。

フェスの二日目、土曜日は午前中からElyの町中でモリスダンスのディスプレイが行われることになっていた。ホテルから市内までは10分ほどの距離だが車で市内に入り、無料駐車場にとめて買い物などをしながらモリスダンスを探した。

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●典型的なコッツォルズスタイルのモリスチーム。
ハンカチを手に踊る。
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●ボーダースタイルのモリス
顔を羊のように黒く塗り、
体は羽というか紐だらけ。こういうタイプ
のチームもよくみかける。踊りはとって
も面白かった。
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●スォードダンスのチーム。それぞれ
の踊り手が剣の根本をもち、となりの
踊り手が剣のほうをもってとぎれる事
なく、回りながら踊る。踊りの終わり
の方でこのように星形に剣を組む。
さあ、拍手!




町の広場ではもうモリスが始まっていた。人だかりがしている。人だかりの最前列はベビーカー組が占めている。ウチもうまいこと最前列にもぐりこんだ。
モリスダンスはイギリスに古くから伝わる踊りで一時は時の流れとともに踊る人も少なくなっていったものの今世紀になってリバイバルがおこり、最近はフォークブームとともに若いモリスダンサーも増えてきたという。モリスのダンサーは6人以上のチームで踊る。スタイル、振り付け、衣装などは地方やチームによって千差万別。特に私が惹かれるのはコッツウォルドスタイル(に近いもの?)でハンカチをもって踊る場合と棒をもって踊るものだ。他にもクロッグ(木靴)モリス、スォード(剣)ダンスなどがあり、総括してモリスと呼ばれるようだ。

いままでもいくつかの都市でモリスダンスを見てきたが、そのその多様さには驚かされる。またモリスを見る一番の楽しみは、ダンサーが同じ振りで踊っていても、それぞれ一人一人が非常に個性的な所。踊り手自身が楽しんでいるのと、誇りに思っている事も伝わってくる。日本のお祭りと同じく、モリスマンは粋でいなせなのだ。特に若いモリスマンは「オレってかっこいいだろ!」といいたげだ。実際、かっこいい。

モリスのディスプレイは大抵2つか3つのチームがかわりばんこに広場の中心に入り、踊る。バンドの形式は様々。多くはアコーディオンやコンサティーナが中心となり、太鼓、バイオリンなど様々な楽器が入るが、編成にはあまり決まりはないようだ。道化やホビーホース(張りぼての馬)なども出てくるが、これもチームによって役割はいろいろで、ただ踊り手と一緒にぐるぐる回っていたりすることもある。以前日本でこういう踊りを研究してる人たちに「モリスは中世が起源の踊りなのにアコーディオンが入るのはおかしいではないか」と言われた事がある。アコーディオンが入るのは音量が大きい利便性があるためで、意外と本国では何でもアリというのが実状のようだ。大体、私に「そんなのおかしい」と言われても困る。いや、伝統というのは現代的なものをとりいれて行ってこそ、生きているのではないだろうか。

photo モリスを堪能して町のパブに入った。フェスのプログラムに「ELYのフォーキーのたまり場」と書いてあったPrince Albertという店だ。まだ町の地理が把握できていず、人に聞き聞き着いてみると入り口に「子供は入れません」との表示。イギリスでは店によって、パブに子供を入れない所がある。法律によって決まっているらしい。 私はあっさり「ダメだってさ」とあきらめようとしたが、夫は念のため、と聞きに中に入っていった。すると「ここの横から庭に入れるから、そこならいいそうだよ」とのこと。庭は思ったより広く、なかなかいいかんじだ。フェスのプログラムにはビア・ガーデンと書いてあるが、日本のそれとは全然違う。鳥小屋もある。関に座ると、向こうにElyの町のシンボルであるカテドラルが見える。(写真左) 私と夫と一人づつかわりばんこにパブの中に入り、リアルエール、普通のビター、朋のオレンジジュース、サンドイッチなどを頼む。

そうして昼食をとっていると、期待した通り、さっき町で踊っていたモリスチームの御一行様が店に入ってきた。というか、らしかった。店の中からアコーディオンの音などがしている。そのうち、店に入りきらないモリスメンたちが庭に出てきた。バンド連中もセッションを始めた。他のモリスメンたちはお昼ご飯をとりはじめた。よく見てみると、同じチームでも年配者のモリスメンと若者モリスメンは別々のテーブルに集ってお喋りをしている。私は年輩のほうのモリスメンのテーブルに行き、一緒に写真を撮ってくれるように頼んだ。勿論返事は"YES!"。私は朋と一緒だったので、「それじゃ、お嬢ちゃんをだいてあげよう」とモリスマンが手を伸ばしたら、朋はさらわれるかと思ったのか、しきりに私のほうへ戻ろうとした。でも、泣かれずになんとか写真をとることができた。
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●はじまるセッション
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●さらわれると思ったのか、あせりまくる朋。
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●モリスマンとなんとか2ショット

そのあと一緒にいたモリスマンの一人がにこやかに話しかけてきた。(写真右の笹の陰にいる人)その人はなんと昔日本にいたことがあるという。よく聞いてみると、本当はその人はアメリカ人で、空軍の軍人で、今はイギリスに住んでモリスマンとして楽しんでいるというのだ。知っている日本語をつぎつぎと言ってくれた。秀逸だったのは「ちりも積もれば山となる」。モリスマンの口からまさかこんな言葉を聞こうとは。

photo パブではまだまだセッションなどが続いていたが、そこをあとにして駐車場に戻った。午後3時から本会場のほうでBlowzabellaが出るのだ。車で本会場(ラグビー場)へ向かう。DansaulというバンドがMeet(ショーケースのようなもの?)をやるというので小テントへ見に行った。DansaulというのはあのEliza Carthyのバンド、Kings of Calicuttのバイオリン奏者Dan Plewsとメロディオン奏者Saul Roseの二人が核になって結成された若手バンド。4人編成で軽快なダンスチューンや歌をきかせてくれる。Saul Rose のメロディオンのスタイルは前から好きだったし、アルバムも聞いていたので、ちょっと楽しみにしていたのだが、テントの中は意外とガラガラ。20人くらいしかお客さんがいなかった。このライブ(Meet)はプレイヤーとは自由に会話もできるし、質問なども受け付けるアットホームな雰囲気でDanがお客さんに「僕ら、誰だか知ってる?」「アルバム持ってる人、どれだけいる?」などと聞いていた。アルバム持っていたのはお客の半分くらい。でも終わりには彼らの熱い演奏でお客も増え、かなりもりあがっていた。

ビールの売店に行ってみると、フリーセッションの人でいっぱいだった。前日にコンクールでチャンピオンになった人たちのバンドとして出ていたイングリッシュ・コンサティーナの男の子とバウロンの女の子がセッションをリードして、盛り上がっていた。やってる曲はイングリッシュ・ダンスチューンがほとんどでアイリッシュもやっている。そのときは楽器がなかったので参加しなかったが、まだ明日にでもやるようだったら参加してみようということになった。
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●サルタレのメロディオンを持った
女性もうまかった。
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●ビールの樽の後ろにいるのが、
イングリッシュ・コンサティーナ
めちゃうまのおにいさん。


次はいよいよ、この旅の目的であるBlowzabellaの登場だ。ビールを飲んだり休憩しながらも、登場するテントをちらちらと見てみる。バンドのメンバーもサウンドチェックを始めたようだ。ハーディー・ガーディの音がきこえる。Nigel Eatonもいるようだ。Andy Cuttingはどこだろう?彼は私たちを覚えていてくれてるだろうか?

***ここから回想シーン***** 96年の6月、私たちはChris Wood & Andy Cuttingのライブが見たいためにイギリスに来た。South Pethertonという小さな町のフェスティバルで彼らのライブを見ることができた。Andy Cuttingは私自身一番すきなアコーディオン弾き。自分が縁あって手にすることになったイングリッシュ・スタイル(D/G)のメロディオンを弾くにあたって、いろいろなプレイヤーを聞いてみたが、彼の独創的で緻密なプレイは群を抜いて素晴らしいと思った。Chrisとのフィドルのからみも面白い。主と縦の関係がめまぐるしく入れ替わるプレイもスリリングでいて、くつろげて、不思議な魅力に溢れている。
******回想終わり******

しばらくきょろきょろとテントの中を見回してみると、前回会ったときのばしていた髪をさっぱりと切ったAndyがいた。一人でいる。チャンス!夫と二人で、テントの中に入ってAndyの正面から近づいた。
Andyはちゃんと我々を覚えていてくれた。娘も紹介した。ウチの娘はまたも人見知り。でもアンディは子供好きのようで優しい言葉をいろいろとかけてくれる。長旅の事を心配してか朋に「ここに来て嬉しい?」とも言ってくれた。

photo Blowzabellaはイギリスの老舗バンドだが、パイプやハーディー・ガーディなどフランスの古楽器を中心にした編成で前衛的な音を作り異彩を放っている。CDで彼らの演奏を聞いていた時はまさかこの音楽で踊るとは思ってもみなかった。でも今日の彼らのステージはダンスの為だ。フィドルのDave Shepherdのcalling (ダンス指導)の元、お客さんはテント内でダンスをするのだ。
演奏に合わせて人々がダンスするのを見ると、いつも私は「ああ、イギリスに来て本当によかったなー」と胸があつくなる。「トラッド」という音楽が機能しているその場に感動するのだ。Blowzabella のケイリーは実に優雅な雰囲気が漂っていた。 テント内の雰囲気はコンサートの会場と違って実にリラックスしていて、ステージの回りも出演者の子供なんかが遊んでたりする。私たちはベビーカーごとステージの脇に陣取って演奏を聞いていた。ダンスをしている人たちも実に楽しそう。ちょっと踊りたい気持ちにもなったが、朋もいるし、演奏も見たいしで、じっとしていた。Andyがときどきステージの上から朋ににこにこしてくれる。演奏してるのはあの"In The Continental Mood"のメドレー。昔から何度も演奏してるといっても余裕。
今回やっぱり一番興味深かったのはNigel Eatonのハーディ・ガーディの演奏。このひとは近年あのレッドツェッペリンと一緒に日本にもやってきたと言うすんごいひと。 この楽器は見たことはあってもちゃんとしたプロの演奏を見るのは勿論はじめてだったし、あのハンドルさばき一つでスムーズなメロディを弾いてるところに蝿が紛れ込んだみたいなジージキ言う音が加わったりするのが実に不思議。これがものすごいカッコイイ。

ダンスワークショップとケイリーでなんと3時間半もの長丁場の演奏。まさに大満足だった。終わったのは夜の8時半。朋はほこりだらけのダンスフロアにごろごろしたりしてあそんでいたが、ついに私のだっこで寝てしまった。Andyに「また明日」、と挨拶してテントを出る。 photo まだまだ外は明るい。フェスはまだこれからという感じだが、その日は帰った。

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