1997/07/27 Cambridge


折角大枚叩いてイギリスまで来たのだからやはり日本で見られないアーティストを見るのだと、意気込んでいたのだが、今回のフェスの大本命LA BOTTINE SOURIANTEの登場。これは最終日の4:00だった。大トリという訳でもない。 LA BOTTINE SOURIANTE、これを発音してイギリスで1度で通じた試しはない。ラ・ボッティン・スリアン=微笑む長靴。私ら夫婦では”ボッティン”で通じる。ケベックのトラッドの老舗で最近はen spectacleと題した最高に御機嫌なライブを出している。まさにスペクタクルと言えるような爽快なアルバムだ。彼らは元々はアコーディオンとフィドルを中心にした典型的なトラッドバンドだったが、後にブラスセクションを加え、ジャズやサルサなどの要素も盛り込んでいる。 ケベックは御存知フランス語圏であり、トラッドは当然フランス的要素が大きいが、ちょっと聞きの頃にはアイリッシュにも似てると思った。それもそのはず、フランス系はカトリックというお国柄、アイルランドの移民も沢山来ているという歴史的背景もあったのだ。勿論リール等のリズムもある。ただ、やっかいなのは変拍子とか、小節数があまるとかヘンテコ。繰返しも不規則で曲が「とにかくおぼえにくい」これはやはりフランス的要素なのだろう。

それにしても、この音楽はまたケイジャンのルーツでもあるし、3回の英国旅行でも蛇腹弾きの間ではちょっとした流行だったし、アイリッシュのミュージシャンも取り上げてるし、とにかく蛇腹ファンには無視できない音楽なのだ。

Dervesh大本命La Bottine Sourianteの登場。このグループ名は”微笑む長靴”という意味だ。つまり古くなって爪先が”ワニ”状態になったブーツの事。

ステージが始る。このバンドの蛇腹弾きはYves Lambertといってデブで眼鏡で髭のギャングの親分のような風貌のおじさんである。CDでは解らなかったのだが、この人が名実ともにこの壮大なバンドを仕切ってる親分でもあったのだ。曲の美味しい部分、アコーディオンは勿論、歌、ハーモニカ、MCに至るまでみんなこの人。アルバムではMCはみんなフランス語だったからイギリスではどうするのかと思ってたら、なんと「サンキューボークー、メルシィベリーマッチ!」ときたもんだ。 アンタはトニー谷か!

バンドはフィドル専門Andre Brunet(←かなり若くてよく動く)とマンドリンとフィドルとギターと”足”をかけもちでやるMichel Bordeleauがトラッドセクション。フレンチカナディアンではこの「足=フット・パーカッション」というのが重要で、バンドのリズムを決定づける。座って楽器を弾きまくりながら下にある板の上で足をタップのようにバタバタ、バタバタ非常に小刻みに踏むのだ。イギリスのChris Woodもフレンチカナディアンの曲をフィドルで演奏をするときは必ずこれを やる。なにやらわからないが、腹筋が強くなりそうだ。

まだメンバー紹介はある。ブラスセクションが4人(もう名前は割愛だ)そしてキーボードとピアノアコーディオンが一人とウッドベース。総勢九人。

つきなみな表現になってしまうが、アコーディオンと歌とブラスとピアノとジャズっぽいウッベが万化鏡の出たり入ったりと変化する様は「かっこいい」の一語につきる。とにかく決ってるのだ。多分こんな音楽はどこにもなかった筈なのに、もう、一つのジャンルと言っていい位にキマっている。こういう音は日本ではもしかするとトラッド・ファンよりもサルサやラテンファンにうけそうな気もする。お客さんが踊る体のノリは完璧にラテンだ。くねくねしてしまう。
殆どの曲が最新ライブアルバムのen spectacleの雰囲気で進行したものの、多少アレンジやメドレーは変えていた。またこの編成のライブだったらたっぷり2時間は聞きたい所である。この日は1時間強くらいだったろうか?勿論イギリスのお客さんは大喜び。旅行で会った蛇腹関係者は口を揃えて「ボッティンは最高だよね」と言っていた。

フレンチカナディアンのフットパーカッションと似てるものにはケルティック・ダンスやそれを原形としたアパラチアンのダンスなどがあるが、フレンチカナディアンのものでもタップのようなダンスを踊るようである。(ボッティンではステップを踏む人が忙しすぎてダンスは踊らなかった(^_^;))以前見たケベックのビデオではボーンズ(アイリッシュと同じもの)をなんと両手に持った上でステップを踏んでるのを見た。最近日本ではカナダのスコティッシュのアシュレイ・マックアイザックが来日、やはりステップ・ダンスしながらフィドルを弾いて観客を大いに沸かせた。

本命のラ・ボッティンを見てしまった後、2〜3見たいステージはあったものの、”昨日のように疲れるのはイヤだ”という事でシートを畳み、テントを出る事にした。あとは気をいれずにダラダラとフェスティバルを楽しもう。まずお腹が空いたので昼間チェックした怪しげな日本食屋台車へ行ってみた。なつかしいちょうちんには「酒はハナハル」の文字。メニュは日本語表記もある。やっているのはチャイニーズのようだ。さきほどテントで場所を確保しているときに連れ合いが買ってきたのはヤキソバだったがこれがなんかイマイチだった。3ポンド(600円)もするのもちょっと不満。でも円が弱いのだから、イギリス人にとっては普通の値段なのかな。屋台は結構行列ができていた。春巻は2ポンド(400円)天麩羅というメニューもあり、これが大きな海老天なのに焼きソバより安い。日本と物価が逆転してる。連れ合いは海老が嫌いなので、春巻にした。春巻本体はちゃんと出来ていたが、醤油もどきのソース、これがあかんかった。全然醤油の味がしなーい。みんなそこらの地面に腰を卸して夕食を食べている。
Chinese food結構繁盛していたチャイニーズ・フード屋。日本のちょうちんがなつかしい。

Chinese foodこれがその怪しい春巻。見た目はパーフェクトである。

ステージが殆ど見えないテントの外に場所をとってごろ寝していたら連れ合いがメインステージ2で面白いのをやってるから見に行こうという。The Old Rope String Bandだった。
session真夏の宵にはThe Old Rope String Bandでお腹を抱えて笑おう。

テント2はサイドの幕も開け放って横からも見られるようになっていた。そこの場所に座って彼等の演奏を見る事にした。3人のメンバーでアコーディオンの人はスコットランドのキルトを履き、フィドルの男はコサックのような格好をしている。後はギター(バンジョー)の人。国籍不明。彼等が喋る度に爆笑が怒る。3人でながぐつを履いてコサックダンスを踊ったり、コミックソングを歌ったり、アイリッシュの曲をおちょくって弾いてダンスしたり瓶を叩いたり、楽しい事この上ない。特に強力なのはピアノアコーディオンの人。
2人のメンバーが「悪いけどさ、オレたち休憩するからお前一人でステージやっといてよ」と一旦引込む。アコーディオンの男は1人で「愛しの熊ちゃん」とでも言う抱腹絶倒の歌を歌ったあと、お客さんの大かっさいを浴びた。すると2人がいかにも自分たちへのかっさいのように出てくる。いわゆるお約束ギャグだ。日本人にも超わかりやすい(^_^)。今度は次に2人の男に「ストリングバンドってなんだからさ、お前ギター弾けよ」としつこく言われてギターを弾かなければならない状況になった。そこでアコーディオンの上に作り物のギターと手を縫い付けたものを着てきてギターの手が動かしながら、下で隠れてアコーディオンを弾く。仲間が手をひっぱると「痛いよー、やめてくれよー」と一応痛がったりするのだが、服の下では下で盛んにアコーディオンを弾きまくる。言葉の障害は若干あるものの我々もお腹を抱えてわらった。本当に楽しい夕方だった。これは儲けたなぁ。

会場は9時をまわってやっと夕方らしくなってきた。人々が思い思いに場所をとってくつろいでいる空き間に自分たちの場所をとってゴロ寝する。空は青くて雲があって、公園の樹木は古いイギリスの風景画のようだ。

こちらのフェスティバルで日本と一番違うのはまず見にくる年齢層というものが存在しない事。赤ん坊から年寄りまでイギリスの人口比をそのままここに持ってきたような感じ。勿論犬もいる。しつけがよい。人種は音楽の内容もあってか、我々含め夕食もとい有色人種はわりと少ない。でも他のフェスに比べてインド系、東洋系、アフリカ系の比率は多い。それから、ステージには車椅子や視覚障害者の人用の席もあって同じようにフェスを楽しんでいる。

もう一つ、フェスティバルでは椅子がないから各自シートやキャンプ用の椅子等を持参することになるが、みんなシートなどは特別なものを持ってこなくて家で古くなったマットや毛布、クッションや寝袋などを持参する。泥の中に平気で引いてる所を見るとあれで捨てちゃうつもりで持ってきているのだろう。我が家は日本で買ったビニールシートを持参したが。ちなみに場所取り用にひいたシート等はみんな平気で靴で踏んで行く。ささいな事だが日本人にとっちゃそれって結構失礼な事だぞ。

音楽を聞く集中力もあまりないので、また出店をひやかすことにした。Sound InterestingとHobgoblinに行って楽器をいろいろ試し弾きする。Hobgoblinの普及版ブランドのPARROTという中国製のアコーディオンを弾いてみた。4ストップのケイジャンアコーディオン仕様。透明ニス仕上げでなかなかかわいく出来ている。ちゃちだがなかなか弾きやすい。でも引込んだボタンがひっこんだっぱなしになっちゃう所が安物の面目躍如(^_^;)
さらにSound Interestingでバウロンを見る。みんな100ポンド(2万円)前後で手頃だ。綺麗な装飾のついた皮のあついバウロンを叩いてたら、バウロン担当のおにいちゃんがMay I help you?と飛んできた。いや、別に、と思ったが、おにいちゃんは盛んにバウロンの叩きかたを教えてくれて(知ってるってば)それがまためちゃくちゃ巧かったりして、あれよあれよと口車に乗せられ、最初に欲しいなと思った綺麗なバウロンの半額の小汚いバウロンを買う事になってしまった。85ポンド。 (約17,000円)チューンナブル。口径は小さいが軽く叩いてもかなりの低音が出る。太鼓に合ったビーターも必要なので、お店のを全部試して、結局選んだビーターは一番高く、10ポンドのやつだったが、これはおまけ。いまにも壊れそうな汚い箱にいれてくれた。

Bodhranサウンド・インタレスティングのBodhran担当のお兄さん。(右)

HobgoblinのCHRIS君には明日Crawley(ロンドン郊外の本店)に行くよと声をかけた。「僕は明日は勿論お休み。本当に長い週末だったよ」との事。確かに連日午前中から夜の11時まで店番だったのだから大変だっただろう。

買ったバウロンを持って外に出た。大トリのDerveshが始っていた。ステージの近くはどんな状態か知るよしもない。でもみんな思い思いに踊っている。ケルティックダンスのステップを踏む人もいる。フェスは11時に終了。残ったのはゴミの山のようだった。


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