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おっきなお腹ででかけてきました

いつ産まれてもおかしくないという正期産の期間である37週をむかえた1998年5月21日、セシオン杉並にて行われたベグリー&クーニー改めベグリー&マレイのライブに出かけてきました。


前々から夫には「そのころはいつ産まれてもおかしくないんだから、ライブには私いかないかね」と言ってたんですが「今まで順調だったし、多分平気でしょ」と夫は意外と脳天気。私は「出先で破水したらどうしよう?」等と前日までごねて、かわりにチケットを買ってくれる人まで探したんですが、結局ダメ、で、チケットはもったいないし、お医者さんに行ってみたら「子供はすこぶる元気だが、まだおりてきてないし、お産になるまではしばらくかかるでしょう」と言われたので決心しました。

この所のケルトブームでシャロン・シャノンやアルタンのダーモット・バーンなど、若手のアコーディオン奏者の来日はあったのですが、今回のシーマス・ベグリーの来日はまさに真打ち登場といった所。あの「Bringing it All Back Home」のビデオではステファン・クーニーのフラメンコみたいな強烈なギターピッキングとともにベグリーのプレイが印象深かった人も多いはず。しかし、若手の派手さに隠れてどうもこういったおじさんは注目される事が少なくて今回の「アルタン祭り」に際しての来日も一瞬耳を疑ってしまったほどでした。

このホームページのアイルランドの項目でも触れましたが、アイルランドの蛇腹にはスタイルが大きく分けて2つあります。一つはB/Cの2ローを使用したスタイル、もう一つはC#/Dの2ロー(ダイアトニック)を使用した”リズミック・スタイル”というスタイル。前者はシャロン・シャノン、ダーモット・バーン等に代表されるメロディアスでなめらかな奏法、後者はジャッキー・デイリーやトニー・マクマホンに代表されるよりビートを強調した奏法です。特にポルカやスライドの盛んなケリー州などではこの”リズミック・スタイル”の奏者が多いとか。で、シーマス・ベグリーおじさんはまさにこのスタイルの第一人者。押しのつよいビートのきいた演奏、つややかな音色はまさに円熟の域に達しています。アルバムを入手したときも「この親父さん凄いぜ!」と私ら夫婦の間では結構お気に入りのアルバムとなっていました。

さて、ライブ当日、早々と車でかけ、心配していた渋滞もなく、首尾よく会場のセシオン杉並に到着。開場時間を待つ人の列に加わると、出演者変更のお知らせのチラシを渡されました。なんと、ステファン・クーニーが過労の為倒れ、急遽彼の弟子にあたるジム・マレイが代役に立ったとの事。半分はステファンのあのバウロンみたいな派手なギターがみたかっただけに残念!そのかわりといっては何ですが前座にアナム、ゲストにアルタンが出るとのこと。チケット代が他のライブよりも安いのに、これらが全部見られてしまうなんて本当にお得。

ライブはピーター・バラカン氏の司会でリラックスしたムードではじまりました。アナムは去年あたりに来日ライブが催されたものの、時間が夜の9時始まりなどという田舎ものにはとても行けるようなしろものではなかったので、今回が初めてに。生粋のアイルランドのグループだと思っていたのですが、実はUKの混成グループでそのレパートリーも多彩。メロディオンとバウロン&ボーカルの女性二人に弦楽器の男性二人がしっかりとサポートするというスタイルで非常に底力を感じるバンド。こんな事言ってはファンに失礼かもしれないけど、「これはほんとに儲けモノ」でした。(アナムに関してはホームページもあったかと思います)

さて、いよいよ真打ちのベグリー&クーニー改めベグリー&マレイの登場。バラカン氏の説明によると、ベグリーおじさんはアイルランドの西のはずれに住む農業を営む人で、まさかこんな世界のはずれに来てコンサートをやるなんて思ってもいなかったらしい。しかし、ひょうきんで気のいい人だというのはステージをみててもわかりました。持ってきたアコーディオンはPaolo Soplaniの灰色のやつで、これはあとで聞いた所によるとキーはC#/Dでした。(アルバムでは赤いD/D#を使ったらしい)プレイは思った通り凄い切れ味で実に爽快。それを若干20歳ジム・マレイが堅実なプレイでベグリーのやや食い気味のテンポ感をうまくサポートしていました。勿論、クーニーの弟子というだけあって、芸風(?)は彼の派手さも踏襲したもので、聞きごたえも充分。

そのあと、少しの休憩があってアルタンが登場したのですが、これはまあ去年見たから、レポートは省きます。最後に、その日登場したアーティスト全部が出てセッション(ラストワルツのアイシャルビーリリースト状態?)で大変お得で楽しめた公演でした。

全体のライブの印象は会場はゆったりしていたし、お客さんもマナーがよく、とても落ちついてみられました。私は妊娠5カ月くらいから、30分を限度で座ってると左のお尻の骨が痛くなるもので、座布団持参しましたが、演目が一つ30分から45分くらいだったので、それほど集中力も必要なく、楽しめました。妊婦がこうやって安心して来られるライブってのがあるのも嬉しい事です。特にこういったたぐいの音楽はもっともっといろんな層の人に聞いて貰えたら嬉しいですね。前日まで渋ってた私も心底行ってよかったと思える内容でした。

記念写真 公演の後、知人の音楽ライターの人たちもみに来ていたので、挨拶すると「さすがに奥さんまで来るとは思わなかった。」「凄い胎教だねえ」と言われました。ここだけのハナシ、その知人のコネでベグリーさんご本人にも会うことができ、サイン貰って、私らの下手な英語でもいろいろお話もできまた。自分たちもアコーディオンを演奏することを言うと「今日楽器は持ってるの?え?これ?」とベグリーさんは私のお腹を指さしておどけるし、「男の子?女の子?どっちでもいいの?予定日はいつ?」なんてハナシにまでなりまして、一緒の写真も撮って貰ったし、本当によい記念になりました。さすがに「明日、セッションやるから楽器持ってきなよ」との超ありがたいお誘いにはお断りせざるをえませんでしたが。(写真は畠山隆夫さんに撮影していただきました、本当に感謝!)

公演中、お腹の中の人の反応は、いまいちよくわからなく、ぐるぐる動いたり静かにしたりしてましたけど、子供にとって胎内で聞いた音楽がこれからどんな意味を持つようになっていくのか、ちょっと楽しみだったりします。

*ついでといっては何ですが、ベグリーさんに会った同じ部屋にアルタンの蛇腹奏者ダーモット・バーンもいました。彼は軽食を両手にもってたんで、小指だけ握手してもらいました。「やっぱダーモット若くて感じいいわー」とミーハーまるだしのオバさんは嬉しかったです。(重ねて茂木健さん、大島豊さん、ありがとうございました。)